僕とこの街と世界。もしくはあなたとあなたの街と世界。
この三つの関わりかたがガラリと変わってしまったのは新型コロナウィルスのパンデミックなのは言うまでもない。
一年前。最初に感染爆発が起こった武漢の中継映像は、人々を震撼させた。ある街では人々は移動を制限させられ、今まで当たり前にできたことができなくなった。昨日まで仲の良かった隣人の咳に眉をひそめながら、誰かが感染すれば犯罪者のように責め立て、その家族の情報をコミュニティの中に晒し、まるで“お尋ね者”のように扱った。ある国ではウィルスの発生源をめぐり人種差別にまで発展し、時には暴力さえ横行した。どんよりと曇った鈍色の空の下、口元を覆われた人々が背中を丸めながら日々を超えていった。人類史に間違いなく大きな痕跡を残した2020年。希望を見出せず、耐え難い日々を耐え忍んだ人類はこの先どのような道を歩いて行くのだろうか……
と、物騒な事をつらつらと書きながら、僕はガヤガヤと騒がしい周りの席を負けないくらいの声で店員さんを呼ぶと、空になったポットにお湯を注いでもらう。テーブルに並んだ色とりどりの蒸籠からプリプリの焼売(シューマイ)を口に放り込み、お猪口のような小さな茶碗にそそいだ熱々のプーアル茶を飲み干す。食は広州に有り。やっぱり美味い。