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Interview – 新井碧 | Midori Arai

2021年4月、「SUIKEI ART FAIR OSAKA」(企画:YOMAFIG)展覧会会場の一つ、Hotel Noum Osaka で初めて新井碧(あらいみどり)さんと出会った。もっと遡れば、京町堀で開かれたとある楽しい会合にて紹介されたHotel Noum Osakaのオーナー・宮嶌 智子さんからSUIKEIを勧められ観に行った。その会合には、のちに「ボイス+パレルモ」(国立国際美術館)連動企画Re:Perspective(10/24終了)にて新井さんを起用したgraf代表の服部滋樹氏はじめ、京町堀で仕事をしている面々がいた。新井碧さんとの出会いの根っこは、京町堀だ。その3ヶ月後にchignitta spaceが京町堀にオープンすることになる。人との出会いがきっかけで、新井碧さんの作品と出会い、ビビビ!と来て、新井さんの自身初となる個展をchignitta spaceでさせていただく事になった。あの時から打ち合わせや取材を重ねて、ご覧いただけることを嬉しく思う。アトリエで個展制作に精を出す新井さんと色んな話しをしました。個展に合わせて、新井碧のインタビューをお届けします。

(取材・写真・文: 笹貫淳子)

新井碧

1992 茨城県生まれ
2011 東京造形大学 造形学部美術学科 絵画専攻 入学
2015 同、卒業
2020 京都芸術大学 修士 美術工芸領域 油画 入学

【作品発表】
『CCMproject 車の代わりにアートを駐芸』 (2012)
(松本春崇講師 企画展) 幕張新都心地下第二駐車場
『ナナメウエヲアルク― 斜め上を歩く―』(2014)
(東京造形大学近藤昌美教授 ゼミ展) (2014)TURNER GALLERY
『zokei展』東京造形大学 卒業制作展(2015)
『ルーシーの空』(2015) 国立新美術館
(東京造形大学 宮崎勇次郎講師 選抜展) 現代HIGHTS『東京五美術大学 連合卒業制作展』

・『HOP展』(2020) ギャラリー・オーブ
・『ターナーアワード2020入選展』 (2020) TURNER GALLERY
・『MEET YOUR ART at ART ART OSAKA』(2021)
(MEET YOUR ART企画)大丸梅田店 15F特設会場 | 1F 東 特設会場
・『SUIKEI ART FAIR OSAKA』(2021)
(YOMAFIG.(旧現代アートと出会う日。Hotel Noum OSAKA)
・『SPURT展』(2021)ギャラリー・オーブ
・『鬼頭健吾(京都芸術大学)×薄久保香(東京藝術大学) 推薦作家展』(2021)
西武渋谷店 B館8階 美術画廊・オルタナティブスペース
・『Re: Perspective』(2021) graf porch (ボイス+パレルモ展サテライト企画)
・『鼓動のりんかく』個展 (2021) chignitta space

Instagram▶︎  @midoriarai_ 

一度社会に出てから自力で学校に戻りたいと思った

 

新井さんは2015年に東京造形大学を卒業してから、次に京都芸術大学(旧・京都造形大学)の大学院に行くまで5年近くのブランクがありますが、その間は何をされていたのですか?

  (新井)卒業後はコンピューターグラフィックの制作会社にデザイナーとして東京で約4年半間働いていました。

 

 

CGですか!これはまた意外なキャリアですね。

  (新井)学生時代はキャンバスに向かう日々でアナログでの表現でしたが、さらに自分の表現力をつけるために、デジタルの技術も身につけたくて就職はその分野で探しました。アニメーションやイラストよりもっとリアルな絵を描けるところで絞り込んでいくと建築パースのCG製作会社に出会い、新築マンションの建築パースをCGで作る仕事をしていました。入社当時はパソコンの知識がほとんどなく、社会人としても名刺交換から含めて本当にゼロからでしたが、充実した4年間でした。

大学院にある新井さんのアトリエにて取材しました

社会に出て、何もかもが初めてで「もうしんどい」と思ったこともあったでしょ?

  (新井)はい、特に最初は大変でした。でもそんなときに、自分の好きなものリストを書いて眺めることで、気分を変えたり慰めたりしていました(笑)

 

 

それは可愛らしいモチベーションアップですね(笑)。そして、CG製作でお給料をもらう会社員生活を4年半ほど経験してからの大学院に入学ですね。

  (新井)はい。東京造形大学を卒業したときに、大学の4年では足りなくて大学院に入ろうとは思っていましたが、一度社会経験をするのも面白いかなと思ったことと、自分のお金をためてから学校に戻りたいと漠然と考えていました。

 

 

それが具体的な実行になったきっかけは何だったのでしょうか?

  (新井)CG製作の現場で働いて実感したのは、仕事はお客さんの要望に応えないといけない、ということ。アーティストとデザイナーの差は、自分の哲学を作品に反映するか、という点です。私はやはり、キャンバスに向かい自分を表現していくことを選びたいと思いました。そして、改めて大学院で学ぶということは、私にとって「画家としてやっていく」という決意でもありました。

うちの大学院なら日本でやっていけるペインターを育てている

 

 

母校の東京造形大学ではなく、京都芸術大学を選んだのは何なっだのでしょうか?

  (新井)最初は、東京藝術大学の修士に行くつもりでした。ここには、国際的に活躍するということを視野に入れた「グローバルアートプラクティス専攻」があり、そこを受けようと思っていました。また、京都芸術大学のグローバルゼミにも興味があり、実際に説明会を聞きに行きました。

 

 

海外での作家活動もイメージとしてはあったのですね?

  (新井)会社員時代に「アーティストになろう」と決意したものの、日本のアートの現場では画家としてやっていくのは難しいと感じていました。海外でアーティストとしてやっていける勉強をして活路を見出そうとしていました。東京藝大を受験しようと心に決めながら、京都芸術大学・大学院の油画の説明会も「聞きに行く」くらいの気持ちで参加しました。そうしたら「うちの大学院の油画は、日本でやっていける作家を育てている」と言われました。この言葉が決め手となり、2020年、京都芸術大学 修士 美術工芸領域 油画 に入学しました。

現在、京都芸術大学・大学院の2年生

入学してみてどうでしたか?

  (新井)はい、良い作品を作るための技術的なことや、美術史の観点から見た作品の作り方などはもちろん、SNSを使ったアプローチや、現代に即したアドバイスを受けています。だからこそ作家が育ち、自立できるアーティストが出てくるのだと思います。

 

 

なるほど。SNSなど時代のツールを活用しない手はないですよね。新井さんはどんなことを心がけていますか?

  (新井)私は、インスタグラムをポートフォリオとして活用し、活動をリアルタイムで見てもらうために新しい絵ができたらすぐに投稿します。インスタグラムを通してお客さんとリアルなコミュニケーションも取れます。

新井さんのインスタグラム一部

新井さんは京都に来て1年半の間に積極的に展覧会にも出品したりグループ展に参加しています。チグニッタと新井さんが出会ったのも2021年4月にYOMAFIGさんが企画された「SUIKEI ART FAIR OSAKA」でした。こうした展示のご縁やきっかけについて教えてください。

  (新井)大学院のオープンスタジオでは、絵画作品を自分で販売するのですが、この機会に多くの方々に観ていただけて、展示のお誘いや個人的に購入してくださる方と出会いました。そこからが展覧会に参加するご縁が生まれています。これも学校の実践的な取り組みの一つですね。

得意の表現と自分の体験を絡め合わせたい

新井さんの絵画作品は、最初見たときに一般的な油画のイメージを払拭するとても軽やかさと儚さ、淡さが印象的ですね。そして、ストロークや線から力強さを感じました。

  (新井)油絵具の粘度や変化せず続く性質が好きですね。色は、淡い色が自分に合っていると思います。意図的ではなく描きたいように描くと結果そうなるので、そこは自分の個性かと思っています。

ストロークにはとても興味があります。ブラッシュストロークや抽象的な線や輪郭を生む動作は、感情や人体のノイズといったものが反映されやすいと捉えています。描いているときの絵具の質感、偶然できる絵具の垂れやレイヤーなどは偶然に生まれたものであったり、描いているときの自分の感情であったり「私的」なものなのかも知れません。でも、鑑賞者によって変換されて受け手に入り込んでいくと思っています。

作品全体のコンセプトなども教えてください。

  (新井)コンセプトを一言で表すと「痕跡を残す」で、自分が得意の表現と、自分の体験を絡め合わせたいと考えています。体験は子供時代に遡りますが、私は病弱で入退院を繰り返していました。子供ながらに命を意識し、「一瞬一瞬を記録する」願望があったと思います。子供の原体験がベースにあり、命の有限性について考えることに結びついているのではないか、そんなふうに思います。

今回は新井さん自身初の個展になりますが、いかがですか?

  (新井)とても楽しみにしています。今回の展示では、ブラッシュストロークの作品と、ドローイングを用意します。サイズはバリエーションを持たせて、白い壁面を利用して大きいサイズも登場します。いろんなプレッシャーをあまり感じずに伸び伸びと個展に臨める気がしています。何より「一緒に楽しみましょう」と言ってくださるのが嬉しいです。

来春には卒業ですね。今後の抱負など教えてください。

  (新井)卒業後もこのご縁を大事にしたくて、京都を拠点にすることを考えています。国内外のギャラリーの展覧会や、アートフェアに積極的に参加したいと思います。また、いつかは美術館などで展示できたらと思っています。とにかく作家として成長したいですね。大学院の1回生の時に、京都芸術大学の椿昇教授が初めて絵を買ってくださり「どんどん試したら良い、この2年間で、自分がずっとやっていける表現を見つけてください。」と言ってくださいました。当時と今はまた作風が違いますが、自分だけの表現を見つけるために毎日アトリエで描き続けています

新井碧 個展 「鼓動のりんかく」

■会期:2021年10月29日(金) ~ 11月14日(日)
■時間:13:00 – 19:00 / 入場無料 / 定休 月曜日
■会場:chignitta space (チグニッタ・スペース)
■住所:大阪市西区京町堀 1-13-21高木ビル 1 階奥
■内容:ドローイング、油画の原画約15点の展示販売
■作品についてのお問合せも受け付けております: info@chignitta.com

個展オフィシャルサイト:
https://chignitta.com/archives/items/midoriarai10292021

 

■交通手段
御堂筋線・四ツ橋線 本町駅28番出口から北に徒歩5分、四ツ橋線 肥後橋駅7番出口から南に徒歩5分

 

■新型コロナウィルス感染症対策に伴い皆様に安心してご来場頂けるようスタッフの指示にご協力をお願いいたします。

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