ーそれではまず、福嶋さん、自己紹介からお願いします。
福嶋:福嶋さくらです。絵を描いています。主に綿布にアクリル絵の具で絵を描いた上に部分的に刺繍、糸を縫って作品を仕上げています。描いているのは「記憶の中の風景」が主なんですけど、写真を見て何かを描くと言うよりは、今経験したことであれば10年後に変化してきた形をそのまま絵にしたいなと思っていて、何かを参考にして描くと言うことはしないんですけど、自分の中で起こった変化をそのまま絵にしています。
ー福嶋さんとお会いしたのは昨年の9月、ちょうど一年ぐらい前ですかね。福岡の「Kyushu New Art」の現場でしたね。阪急百貨店丸ごとアート展開をされていて、会場でアーティストの篠崎理一郎さんから福嶋さんを紹介されて、作品を見たのですが、イラストレーションと現代美術の間を行き来するような作品でありながら、たくさんのストーリーを感じた第一印象でした。作画の秘密などは後でゆっくりお聞きするとして、最初にまず福嶋さんの画家になるまでのストーリーをお聞きしたいのですが。
福嶋:小さい頃から身近に画材があって、自由に絵が描ける環境でした。高校になって美術科のある高校を選んで、そのまま自然に美大に行って大学院に行って今に至る感じです。
あまり迷いはなかったんです。クリエイティブな職業に就きたいと思っていたのですが、画家になろうと思ったのは大学の卒業制作をしている時でしたね。それまでは絵で食べていけるとは思っていなかったので。
ー今の綿布にアクリル、刺繍という手法を発見したのはいつぐらいですか。
福嶋:大学の3年、4年の時です。それまでは油画学科で油絵を描いていたのですが、学科の中で油絵を描いていた人はほとんどいなくて。笑。私はずっと何の疑問もなく油絵を描いていたので。
大学に入って200人の生徒がみんな違うことをしているのを目の当たりにして、ショックを受けて、そこからシルクスクリーンやいろいろな手法も試すようになって、綿布も刺繍もアクリル画絵の具もそんな試行錯誤のなかから生まれました。
ー福嶋さんは各地で長期にわたるアーティストレジデンスなどもされておられますが、そういうチャンスはどうやって掴まれたのですか。
福嶋:大学時代の交友関係もありましたが、ただ待つだけではなく、自分で縁をつかみにいかないと、と思いました、大学院を卒業してから1年後に、別府に移住して、そこで2年間過ごすのですが、「清島アパート」という、1年単位で作家が移住して作品制作するのを支援するというシステムがあるのをネットで見つけて、九州出身だし、実家も近いし、新しい場所に行ってみたいと言うのもあったので踏み込んだと言う感じです。今でも、コンペを主催者や、審査をしてくれる人に興味があれば、積極的に応募をしたいなと思っています。