武蔵野美術大学・大学院で油画を専攻した福嶋さくらは、これまでに数多くの美術館やギャラリーで作品を発表し、2021年「清須市第10 回はるひ絵画トリエンナーレ」にて大賞受賞の実力派画家です。また、ファッション業界からもラブコールを受けてユナイテッドアローズ社によるアート企画出展やファッションアイテムの商品化など活躍の場を広げています。
福嶋さくらは、綿布にアクリル絵の具で絵画を描き、その一部に刺繍を施すという作品を制作しています。着彩のグラデーションや、境界線が滲むような曖昧に描写される風景に、糸を縫い、ある種の立体感と存在感を持った糸のはっきりとした輪郭のコントラストは、カメラでピントを合わせたような明瞭さを画面に与えます。私たちの日常や、自然の中の風景には明確に区切れるものはなく、どれもが曖昧さを持ち合わせ形成され、その中で私たちは無意識にどれか一つの事柄を考えたり、感じたりしています。 福嶋の作品は、このような時の流れの曖昧さの中に一瞬の存在と際立ち、そして記憶を観る人に感じさせます。
初の大阪個展となる本展のタイトル「隔たりを行き来する」は、縫うという行為自体が、針で糸を表面と裏面に行き来させることからはじまり、朝から夜になる時間の変化や20 代から30 代などの年齢の変わり目、家から外へ出るためにドアを開けることなど、何気無く無意識に行き来する事柄や行為、瞬間のイメージとも重なっています。