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Interview – 山口一郎



山口一郎、画家。静岡県で生まれ育ち、東京・銀座で人気イラストレーターとして働き、そして現在は香川県を拠点に創作活動に没頭する日々を10年近く送っている。「アトリエって自分では絶対に呼ばないんです、そんなオシャレじゃないでしょ。もうね、作業場ですよ。」と笑顔で話す山口さんの「作業場」に初めてお伺いしたのは7月初めでした。そこから、 10月8日(金)よりchignitta spaceでは初めてとなる憧れの山口さん個展に向けてののお仕事がスタート。

マチスの切り絵と迷いのない色彩に突き動かされる、という山口さんは、子供が真っ白い紙に向かい即興で描くように明るくて迷いのないエネルギッシュな線を描く。しかもすごく早いのだ。レコードとたくさんの「好きなもの」に囲まれた作業場でお話を伺った。

(取材・写真・文: 笹貫淳子)


 

山口一郎

画家。香川県在住。セツ・モードセミナー卒業後、イラストレーターとして雑誌広告の仕事に携わる。 現在は青山のDEE’S HALL、IDÉEなどで定期的に個展を開催し、海外のギャラリーでも展示会を行う。雑誌「暮しの手帖」では目次の挿画を担当中。インテリアとの親和性も高く、幅広い世代に支持されている。


 


マガジンハウスでデビュー


もともと漫画が好きで、絵はずっと描いていました。高校卒業の頃に、当時人気のファッション雑誌「OLIVE(オリーブ)」(マガジンハウス)を読んでいたら、憧れのミュージシャンがセツモードセミナーという美術学校(2017年閉校)出身と書いてあったのを目にしたのです。「この人が出ているセツってどんな学校だろう?」と調べると、東京にあり学費も安い。これなら僕でも行けそうだ、と思って受験して、セツモードセミナーに入学しました。

僕はマガジンハウスの雑誌が大好きで、セツモードの在学中から銀座のマガジンハウス社にあるOLIVE編集部にイラスト作品を持っていったんです。そしたらすぐに採用になっちゃって、OLIVEの挿絵でデビューしました。その後、次はPOPEYE編集部に持って行ったら、いきなり表紙に採用されたんですよね。いやー、もうびっくりしました。






マガジンハウスに住んでいた!?


OLIVE編集部の一角に机を置いてもらい、昼間はそこでイラストを描き、夕方くらいになると「蕎麦でも食べに行こうか」と周りの大人の誘いに一緒に出かけて、夜にまた編集部に戻って描いてそこで寝る、、という生活をしていた時期がありました。住んでいたというより勝手に住みついていました。今では考えられないですね、そんなおおらかな時代だったんですね(笑)。




山口さんは瞬く間に人気イラストレーターの道を駆け上がり、雑誌から広告まで仕事の幅は増え、キラキラした東京で暮らし忙しい日々を送っていた1990年代。やがて、パタンと扉を閉めるように東京を後にして浜松の実家に戻った。



終わりの始まり


レギュラーで抱えていた大きな仕事が一区切りついた時に、自分の中でイラストレーターへの道という気持ちやモチベーションも一区切り付いたんですよね。ポートフォリオを携えて仕事を探したり、契約やコミッションワークを続ける日々から、自分の描きたいものだけを描くスタイルに変えていこうと強く思ったのです。イラストレーターではなく「画家になる」、そう決めて東京を離れました。どこか疲れていたかもしれませんし、やり切った感がありました。一旦リセットをして、生活コストもあまりかからない実家に戻り、当時はSNSも無いですから、小さなホームページを立ち上げてブログのように毎日自作の絵を投稿する日々を続けていました。やがてブログの読者から「山口さんの作品が、このギャラリーにとても合うと思う」と南青山にあるDEE’S HALL(ディーズホール)を教えてもらったんです。作品を見てもらう勇気がなかなか無くて、実際にお会いするまでかなりの時間がかかりましたが、これがきっかけで、定期的に個展をするようになり僕のメインギャラリーとしてずっとお付き合いをさせて頂いています。僕の作品をいくつかコレクションされているミナ ペルホネンの皆川明さんとも知り合えたのはディーズホールがご縁でした。



人との出会いで新しい場所から始まる


香川県との縁も静岡から発信していた僕の作品ブログの読者の方から、香川に遊びに来ませんかと誘っていただいたのがそもそもでした。僕は、香川出身の猪熊弦一郎さんが大好きで、猪熊弦一郎美術館も目当てで香川に行ってみよう、と出向きました。遊びにいく程度だったのが、アーティストを目指す人々が何人も住むときわ荘みたいなアパートの一室が空いていて住むことになり、そこで面白い人たちと出会ったことから今に続いていますね。11年も住むとは思わなかったのですが、人のつながりが一番大きいと思います。坂出は気候が良い、猪熊弦一郎美術館も隣の市にある、何より写真家や音楽家の友達もいて、僕に仕事をくれたり作品を扱ってくれる会社も増えました。ここを拠点に今は全国で個展をしながら旅をするのが好きですね。僕は、本屋と画材屋さんが住む町にあれば満足で、ここにはその両方があるんです。



誰かのために描いているかもしれない


アイディアやインスピレーションがどこから来ているのかは分かりません。ただ、誰かのために描いたものが、その後に作品として登場することが多いです。例えば、花の絵。DEE’S HALLでお世話になった方が亡くなられた時、感謝の気持ちを表すためにDEE’S HALLの壁一面に花の絵を飾りました。それが今の花シリーズの始まりです。「自分で描きたいよりも、誰かのために描くこと」が原動力かもしれない。そういう気持ちが絵に伝わり、作品として愛されてシリーズとして残っていくことが多いですね。

僕の絵の面白いというか特徴としては「家を新しくしたので山口さんの絵を買いたい」「初めて絵を買うので山口さんのを買いたい」と皆さん割と具体的なのです。僕自身、自分の部屋に飾れる絵を描きたい。飾れない絵は描きたくないのですよね。



取材を終えて: 「お腹を空かせてきてくださいね、うどんを食べましょう」 坂出に向かう列車の中で受け取ったLINEにニンマリした。 駅に迎えにきてくれた山口さんはニコニコしながら、まずはうどん屋に車を走らす。 プレハブ小屋みたいな大人気店のうどん屋で山口さんの後ろに並んで彼の真似をしながらうどんを頼み、歯応えのあるうどんを頬張る。せっかちだけど柔らかなエネルギーを発する人柄同様に、作品も魅力に溢れている。今回、30点近い原画をご用意いただけて感無量です。一人でも多くの方にご覧いただきたいです。(笹貫淳子)



山口一郎 個展 | from big slope


■会期:2021年10月8日(金) ~ 24日(日) ■時間:12:00 – 19:00 ■会場:chignitta space (チグニッタ・スペース) ■住所:大阪市西区京町堀 1-13-21高木ビル 1 階奥 ■内容:絵画作品の展示販売 ■入場無料 / 定休 月曜日 ■お問合せ info@chignitta.com

作家在廊予定: 10月8日(金)・9日(土)

在廊中コンテンツ: 10月9日(土)は「ライブペインティング」「作家と話すギャラリートーク」を予定しております。

インスタグラムで更新していきます。https://www.instagram.com/chignitta/

山口一郎のアート作品30数点を一挙展示販売します。 作品の問い合わせも受け付けております。メールでお問い合わせくださいませ。 info@chignitta.com

**ECサイトも同時展開** https://chignitta.thebase.in/






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