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MINAMI MIYAJIMA「JITSUZAISEI」という名のチャレンジ。



ある日突然、SNSを賑わせることになった四角の群れ。そして「JITSUZAISEI」というクセのあるワードとカクカクしたロゴマーク。20代のアーティストがはじめたギャラリープロジェクトが大阪のアートシーンを揺さぶっています。


2021年、4月4日、4時44分にオープンしたアトリエ&ギャラリー 。しかも場所は6月末まで非公開。クラウドファウンディングで支援した人だけ住所を知ることができる仕掛け。柿落としのグループ展に集まったアーティストは40組。なのに場所は秘密。SNSの写真で見る限りかなり攻めたデザイン。自分のアートに囲まれたバーカウンターまである。なんだなんだ?インディペンデントで頑張る人を応援したいchignittaとしては見逃せない。この企画の首謀者でありJITSUZAISEIのオーナー、MINAMI MIYAJIMAさんを取材しました。

(取材・撮影:谷口純弘、笹貫淳子、写真提供:JITSUZAISEI)


 

MINAMI MIYAJIMA

1997年 大阪府大阪市うまれ、在住。図と無機質が好き。大阪芸術大学を3ヶ月で中退。その後イラストレーションを軸に、グラフィックデザインや現代アートなど多様に表現して生きている。現在は四角形が密集している集合体の作品で活動。2020、2月twitterで1.2万件のいいねがつき注目を浴び、マーケティング特化のセミナーイベントに登壇するなど、メディアへの露出も増える。 主となるコンセプトは客観視。常に前衛的な姿勢で制作を向き合いつつ、抽象的な可視性を表現していきたいと考えている。目標は自身のブランドを持つこと。2021年4月4日。大阪某所にできたアトリエ兼ギャラリー「JITSUZAISEI」主宰。







 


■私の絵のテーマは「客観視」なんです。

4歳ぐらいから絵を描くのが好きで、唯一褒められるのが絵だったんです。美術系の高校に進学して、このままずっと絵を描こうとしていたのですが、あまり評価してもらえなくて。 17歳の頃、人間関係で悩みだして、気がついたら四角の絵ばかり描きはじめたんです。そもそも建物とか建築が好きだったので、見てて癒されるんですね。四角を描いていたら不安な自分の気持ちが客観視されて冷静になれるんです。無になれるというか、その頃は自分の描いてるものがアートとは思ってなくて。辛い気持ちを紙にぶつけてるだけだと思ってたんです。ある日、高校生しか出せない展示会があって、高校最後だからと四角で出してみたらなんと賞をもらえたんです。「これをアートって捉えてくれる人もいるんだ」と。第三者の目で見てもらうことが大切なんだなと感じたのです。 自分のアートや、自分に自信がない人にも「そんなことないよ」って感じてもらえるのじゃないかと気付いて、それからずっと四角を描き続けています。芸大にも行ったのですが、合わなくて3ヶ月で辞めて、もうアウトサイダーで行こう、いける気がするっていう根拠のない自信だけはあったので。同世代のみんなより早くスタートが切れたと思うし、後悔してないです。


「客観視」がテーマ。どこまでも反復される四角のモチーフ

2018年にアートフェア「UNKNOWN ASIA」に出展しました。初めて四角だけで勝負に出ました。BEAMSの白川さん、クロネコキューブの岡田さんの二人からレビュアー賞をいただきました。大人の方にちゃんと絵を見てもらったのは初めてだったので嬉しかった。アーティストとたくさん繋がることができたのも大きかったです。


2018年「UNKNOWN ASIA」出展。谷口のレビューはこちら。https://bit.ly/2RIGkoM

■SNSとクラウドファウンディングが私を変えた。

その後、個展を2回やって、ある日、ツイッターでバズったんです。「四角を無限に描いてるアーテイストですが、ヤク中じゃないですよ」みたいなことをツイートしたら何故かウケて、一気に何万件もイイネついて、何千人もフォロワーが増えて。それで自信がついたところもありますね。それきっかけで「絵が欲しいです」と言ってくださる人がいたり、グッズが出たら絶対買ってくれるファンの人がでてきたり。 2020年まで会社勤めしていたのですが、コロナで仕事がなくなって会社を辞めざるを得ない状況になってしまった時に、クラウドファウンディングはじめたんです。グッズをつくって販売するというリターンでした。目標金額は20万円にしました。5万すら集まらないんじゃないかなと不安になってましたが、結果的に100万円(500%)近く集めることに成功しました。


■ギャラリー「JITSUZAISEI」ができるまで。

ギャラリーを作ろうと思ったのは、 アトリエ三月(大阪、中崎町にある現代アートギャラリー)の影響が大きいです。先輩の紹介で行くようになって、何度か展示に参加させてもらいながら、オーナーの原さんと仲良くなり、ギャラリーでバイトすることになりました。原さんのやってることを見てギャラリーの仕組みをなんとなく覚えたり、いろいろ相談に乗ってもらったりしていました。全然キュレーションなんてできる自信もなかったけど、自分の制作スペース兼、ギャラリーみたいな場所があったらいいなという思いがわいてきて、中崎町で物件とか見ていたんですが、家賃高すぎて。

この場所も、縁があって借りることができたんですが、最初、自分のアトリエにしようと思ってたんですけど、コロナのせいでギャラリーのレンタル料が値上がりしたり、大学の製作室がコロナで封鎖になったり。アーティストにとって、それは機会損失じゃないですか。いい作品をつくっていてもお金がないからとか、場所がないからという理由で表現する場を失うのが悔しく思ったので、ここをレンタルスペースにしようと思いついたのです。 この辺り(場所秘密)も数年前の中崎町みたいに古民家再生のお店が増えてきて、映えるカフェとかビール専門のスタンドができたりして変わってきてるんです。うちのギャラリーも、街再生のきっかけになったらと思っています。


ギャラリー作りに一念発起し、今回もクラウドファンディングに挑戦してみようと思いました。資金調達も目的ですが、なによりもクラウドファンディングをすることによって濃いファンを作ったり集めることが出来るので、やってみようと。 クラウドファンディング=懇願的なお金儲けみたいな固定概念を抱かれがちなので、そのイメージを変えていきたいんです。

クラファンによってこのスペースを認知してもらいたかった、というのもあります。それには仕掛けが大事だと考え、思いついたのが「場所非公開」。ありえないじゃないですか。攻めすぎじゃないですか。笑。コロナ禍だからあまり人も集まれない状況だからこそ、逆に選ばれた人しかいけない、宝探しみたいな感覚で。宝は、展示されている作品なんですけどね。そういう感じで来てもらったら面白いんじゃないかと。そんなアイデアではじめてみたら、話題になって、取材もたくさん来ていただけました。


住宅街に突如現れるホワイトキューブ。夜になると青いLEDが灯る

内装もデザイナーさんに私の無茶振りを全部伝えてお願いしました。最初は普通に真っ白に塗って終わりのはずだったんですが、2階の壁を私の柄にしたいとか、見た目も本当に一瞬ここは何かわからない感じにしたかったし。安藤忠雄が憧れなので。笑。インスタレーションのような空間演出がめちゃ好きなので、美術館のような感じがいいなと思って、床も取っ払って吹き抜けにしてもらいました。



JITSZAISEI内観、上)真っ白な吹き抜けを見上げると四角に囲まれたバーが見える。下)バーから見下ろすギャラリースペース。インスタレーションも映える空間。

「JITSUZAISEI」という名前は、漢字で書いたら「実在性」。私の作品テーマが「客観視」なので、そこを突き詰めて行き着いた言葉が「実在性」だったんです。漢字が重いので「JITUZAISEI」と英語にして。いろんな「実在性」や考え方をここに持ち込んで共有できる場所にしたいなと思ってつけました。

2階のバーはコミュニケーションスペースです。コロナで出歩けないですし、改めてコミュニケーションの大切さを感じて欲しいなと思って。コレクターさんとアーティストが話できるのもいいし、アーティスト同士でもいい。そこで盛り上がって企画展が始まるかもしれないし。いろいろ可能性を秘めていると思ったのです。これもアトリエ三月さんとスタイルは近いですね。


自作のアートに囲まれたバーカウンター

■クラファンの目標金額も444,444円、スタート日も4月4日に決定、オープニング企画展のアーティストも40人。「4」という数字へのこだわりもすごいですね。

自分のことを「スクエアアーティスト」と呼んでいるんですよ。全部スクエアの「4」から来てます。4月4日の4時44分44秒にオープン。クラファンに参加した人だけ来れます。場所はオープン4ヶ月後に住所公開します。いろんなことにこだわり続けたら興味を持ってくれる人がいるんだなと思って。

結局130万円ぐらいですかね。44日間やってるんで。笑。支援者さんもノリノリで4444円。とか支援してくれたり、みんなで盛り上げてもらえる感じが嬉しいです。


「JITSUZAISEI」クラウドファウンディング。221人の支援で1364,444円達成! https://camp-fire.jp/projects/view/373174

■40人のグループ展は、有名無名のアーティストが混ざっていながらそれぞれが独特の存在感を放つ素晴らしいキュレーション。どうやって集めたの?

私が声がけさせてもらって、2か月で企画しました。本当は10人ぐらいのグループ展をイメージしていて、どうせ断られるだろうと思いつつ、出展していただきたい好きな作家さんに多めに声がけしたら、ほとんど全員受けてくださって。その理由が「私のことを応援したいから」っていう理由で、みなさんの優しさでここまできたかんじです。私の作品は展示してないです。ここが私の作品なので。

4月4日の午後4時44分。オープニングの日は雨で、最悪の天気だったんですけど。並ぶくらいに人が集まってカウントダウンをしたんですけど、民家なんで騒げないので小声でカウントダウンして。笑。はるばる東京から来てくださった人もいました。


40名のアーティストが参加したオープンニング展。画面左上には師匠、アトリエ三月原さんの作品も。

■20代のアーティストがやってることの想像力をはるかに超えてますね。完成度も高いし、こんなキュレーションできる人いないよ。あなたの活動そのものが面白いし、このスペースに突っ込んでいるエネルギーが半端ない。謎を何重にもかけまくってる遊びにも反応してもらい、SNSで広げて、クラファンで支援してもらう、まさに今の時代のギャラリーの誕生だな、と思います。

「ギャラリーを一緒に運営しませんか」と、SNSでメンバー募集したら結構集まってくれて、その人たちがめっちゃ動いてくれて。みんな20代で同世代で、仕事やりながらなんですけど、すごいかかわってくれようとしてくださるんです、ここは私ひとりで運営するのではなくて、いろんな人の力を借りてみんなで作っていく、というのが理想なんです。キュレーションやってみたいという人がいたら、経験としてやってみてもらったり、みんなのための得がある場所になればいいなと思っています。いろんな人がここにきてくれて、ここきっかけでアートが好きになる人が増えてきたら嬉しいですね。この地域の活性化にもなったらいいな。


有名無名、才能ある若手アーティストが一同に介したオープニング展

■自己実現のために頑張ることだけでも大変ですが、MIYAJIMAさんの行動は、常に表現活動をしている仲間のためになることを考えている。その姿勢がさらにたくさんの人の共感を呼ぶのでしょう。

私も売れてないのでアーティストとしてまだまだ頑張っていかなあかんと思いますけどね。素直に面白いことだけやりたい。楽しみながらお金になっていけたら。何かやりたかったらクラファンやったらいいし。私、若手アーティストで資金がないっていう人のクラファンのアイデアを提案して2回成功させてるんで、同じ世代の人たちにも、何かアドバイスもできるんじゃないかと思っています。

■オープニングのグループ展が終了し、現在「JITSUZAISEI」ではミヤケノリコさんの個展がスタート。

もう、エロいを通り越してやばいです。ミヤケさんのことは、アトリエ三月を通じて知ったのですが、すげー、カッケー!と思って大ファンになって。好きすぎるからストレートにオファーかけたらOKいただいて個展ができることになりました。夢のようです。


ミヤケノリコ展 ―生命万歳― 5/6→5/20 □JITSUZAISEI

■ただいま、ギャラリーの中は蛍光色の女性器オブジェでマン開です。クラウドファウンディングは終了しましたが、オンラインでミヤケさんの作品を購入した方にはスペースの場所を教えてもらえるそうです。「JITSUZAISEI」の話題はまだまだ続きそうです。

作品販売ページはこちら

「JITSUZAISEI」HP






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