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2020年3月、ロンドンロックダウン突入



「Journal from the Cityは世界各国にいるChignitta contributersによる都市のレポート。」

今回は、2020年春に私たちが初めて直面したCOVID-19による「非常事態」の当時を、それぞれのシティから改めて振り返ります。


LONDONから届けてくれるのは、ちょうど中国でウィルスが発生していると囁かれていた2020年1月、まだ私たちは自由にナイトライフを楽しんでいた。そんなある夜、心斎橋のMILK BARで、ロンドンから日本に旅行中のTerryと出会った。何を話ししたか正直覚えていないのだが、とにかく意気投合して楽しかったことは確かだ。翌日、南堀江で会い、東京でも会った。「ロンドンで会おうね!」と言って帰国直後にイギリスはロックダウンに突入。クリエイティブディレクターのTerryによるステイホーム記録 in London. (Junko Sasanuki)


 

テリー・マッケオン

ロンドンで See Thourhというクリエイティブスタジオのファウンダーでありクリエイティブディレクターとして、思慮深く透明なアプローチで刺激的な作品を発表しています。

 

■What a crazy time to be alive, eh?


2020年3月、ロンドンはロックダウンに突入した。僕は、これまで何度か「住民や観光客が消えてホラー映画のような廃墟な不気味な街になったらこの街はどんなふうに見えるのだろう」と想像することもあった。そう、そして僕たちは実際にそれを見てしまった。誰もが、こんなこと生きているうちに経験するとは思っていなかった。今回の経験が僕を含めて多くの人々にどのような影響を与えているかを分かっているし、誰もが安全で健康でいられることを願っている。

僕自身、ここ3年ほどは自宅が仕事場でもあるので、ロックダウンになっても天地がひっくり返るような変化はなかった。ただ、それでも、自分のバランスを取るために変えなきゃいけないこと、合わせていかないといけないことが幾つも出てきた。仕事では、キャンセルやリスケジュールも発生したので、その分自由な時間も自ずと増え、これを贈り物と捉えるか災難を捉えるかは自分次第ということだ。


閑散とした通り


“Whosoever is delighted in solitude is either a wild beast or a god.” – Aristotle

孤独を愛するものは野獣か、そうでなければ神である − アリストテレス


■ Hello, neighbours.


僕はロンドン北部のこじんまりとしたアパートにガールフレンドと一緒に住んでいる。窓枠付きの窓があるだけで、外に出れるバルコニーはなかった。でも、歩けばすぐの距離に大きな公園もあり、ロックダウンになるまで僕たちはバルコニーのことなど考えたことなどなかった。しかし、ステイホームでずっと自宅にいて、混乱した情報が垂れ流されていく日常に、自然との繋がりや精神の正気を保つために、プライベートの庭やバルコニーが無いということが明らかな「問題」となった。

ロックダウン期間中のロンドンは、外で過ごすことができる時間に関しては、他の国ほど厳しくはなかったけれど、店舗やレストラン、パブは閉められ、自分たちの未来を思い巡らす力や能力が損なわれたことは誰にとっても大きなインパクトだった。これが僕たちのニューノーマルなんだ。そこで僕たちは自分たちでできることを計画し、自分たちができることで影響を与え、この世界に新しい道を切り開くことに着手した。日々の食事作りのことから毎週金曜日の映画鑑賞まで、これまで僕たちになかった仕組みが日常にもたらされた。時間はゆっくりと流れ、僕は与えられたものを最大限に活用したいと思うようになったんだ。

部屋に外とのコネクションを取り入れるため、窓を覆っていた窓枠を外してみると開放的な窓辺になった。僕はそこに腰掛けてフランス語の勉強をしたりまどろんだりしながら1日のほとんどを窓辺で過ごすうちに、今まで名前も知らなかった同じ近所の人たちも知り合えて良い近隣関係が生まれた。友達もやってきて、僕たちは窓辺から紅茶を、時間帯によってはビールを片手にお喋りを楽しむようになった。

ロックダウン第1週目、僕の毎日はヨガと絵を描くことで満たされていたが、やがて「もっと学ばなければ」、「もっとやらないと」、「もっと生産的にならなきゃ」、「もっと〜しなきゃ」という衝動に駆られ、それが極端になり少し体調を壊した。新しいバランスを理解し、見つけるのには時間がかかり、何もしなくてもいいということを知るまでには、しばらく時間がかかった。実際、クリエイティブなプロセスには、考えたり、やったりすることと同じように、休息も重要なのだ。


隣人と過ごす

外との繋がり

■Creativity during Quarantine (隔離期間中のクリエイティビティ)


このコロナ禍において、自分の立ち位置がどうであったか、どのような影響を受けたかによって、ポジティブな瞬間がたくさん生まれたと信じている。世界はリセットを余儀なくされ、人々が立ち止まって自分の人生や、どこへ行こうとしていたのかを考えさせてくれている。新しい道筋や新しい機会を 見つけるのに時間がかかったかもしれないけれど、 僕はステイホームの隔離期間を通して、非営利団体や自発的に生まれた素晴らしいプロジェクトへのコントリビューションに取り組んでいる。

最初に手掛けたのは、気候変動における環境活動のサポートやイタリア赤十字のための資金調達を行っている「designersagainstcorona (デザイナーズアゲインストコロナ)」へのシンプルなポスターの提供だった。今では、様々なイラストレーションやアーティストがこの活動に賛同し、提供されたポスターが本になり、赤十字社を通じて販売される。

僕は、「”世界は変わった。君はどうだ?」というシンプルなメッセージのポスターを作った。コロナの現在、世界が突然間違った方向に回転しているように感じたとき、僕は「例えすべてのものがあなたの周りで変化しても、あなたはまだ良い方向に変化することができる」と伝えたい。


筆者が作成したポスター  “The world has changed, will you? “

僕はまた、新しいレコードレーベルの立ち上げにも取り組んでいて、興味深い仕事の方法をいくつか思いついた。まだ進行中のプロジェクトにつき、現時点ではあまり多くの情報を開示することはできませんが、簡単に紹介してみよう。

メンバーとは、COVID-19のために一緒に仕事をすることができなかったので、既成概念にとらわれずに物事を考え、アイディアを実現させないといけなかった。今までとは違うやり方とは?どうしたら違うアプローチでアートワークの制作ができるのか?考えた挙句に寝室をフォトスタジオにしての撮影だ。ラップトップパソコンと黒い毛布、そしてズームを通してのカメラマン。想像していた以上に良い作品に仕上がったアートディレクションの一部をご紹介しよう。新しい仕事のやり方が生まれた。新しいやり方 – それはレコードレーベルの基礎となったコンセプトと同じだ。


新しい制作現場

Sneak peek of a new artwork

■Illustrations through “Eye-Isolation” (閉じ込められた日常- アイ・ソレーション – でのイラストレーション)


花瓶や器のようなものに惹かれたのは、閉じ込められていることが無意識のうちに影響しているのかもしれない。この期間、僕は様々なイメージの中に目を入れるようになり、透けて見えること(seethrough) や孤立 (isolation)ということを考えて遊んでいた。最近の作品では、タバコを吸ったり、友達とお酒を飲んだりといった社会的な距離感を奪うことへの心象が色濃くなっている気がする。時間が経って振り返りつつ自分が作ったものを見るのは面白い。時間の断片を眺めているようだ。(これらのイラストのいくつかは seethroughstudio.comを介して購入可能)


ステイホーム中の制作

■Together Apart (離れても一緒に)


ロックダウンで大きな被害を被った企業の一つである地元のインディペンデント映画館「ジェネシス」を支援するためのプロジェクトをanima.londonから連絡を受けた。このプロジェクトの目的は、クリエイティブを通して地元のアーティストを繋ぐことだった。映画館で並ぶ時の事務的な「足元サイン」をポジティブでクリエイティブな表現でソーシャルディスタンスを訴求する足元サインを作った。そう、これは私たちを皆で一つにするのを助けてくれる。より大きな「善」のためにみんなをまとめてくれるこの種のコミュニティプロジェクトこそが創造性だ。ロンドン市長も相当気に入ったようだ。

今はまた仕事が軌道に乗り始めていて、本誌投稿直前にあるプロジェクトも仕上がった。


筆者と自身がデザインしたソーシャルサイン

筆者がデザインしたソーシャルディスタンシングサイン

■ Seeing Things – A Series of Parallels by Cass Beck (物事を見る – キャス・ベックによる「パラレル・シリーズ」)


僕と同じように、パートナーであるガールフレンドもパンデミックの副産物である「時間」がなければできなかったであろう素晴らしいプロジェクトに取り組んでいた。昔の写真を見返し、「また旅がしたい」と思いながら頭の中で旅をする、というものだ。もちろんロックダウンのため、旅は非現実的であり、想像は記憶や夢に過ぎない。しかし、この考えの中で、新しいアイデアが生まれ、本が生まれたんだ。彼女は過去10年間に撮影した写真の間に様々な類似点を見始め、それらをペアリングしながら編集した。視覚的な類似性であったり、イメージが一緒に知覚される方法の概念的なものなど。このプロセスには数ヶ月かかり、僕は本のデザインを手伝った。僕は彼女がこの期間に達成したことをとても誇りに思っている。自分のアイデアを世に送り出すということは、それがどんなにワイルドでも奇妙でも、あとでちゃんと振り返ることができるということだ。


Seeing Things @CassBeck

Photography by @CassBeck

みんなと同じように、この状況がどのように終わるのかわからないけど、どこにいても、安全でいよう。このジャーナルが、僕たちがどのようにして世界を変えることができるのか、あるいは何が起こっているのか、そうしたことから少しでも気晴らしになるような洞察として機能することを願っているよ。

読んでくれてありがとう。

Terry


筆者

Credits:

Photography by @CassBeck

Illustrations by @SeeThroughstudio

PR photography by @justinpolkey

Agency: @anima.london

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