昨年開催の「メタセコイア・キョウマチボリ・アートフェア2022」にて審査員・笹貫淳子賞を受賞した画家・進士三紗の個展『立ち現れる輪郭』を開催します。本展は受賞の副賞企画として1年近い期間、進士三紗とキュレーターの笹貫が会話を深めながら構築した内容となっています。
京都で生まれ育ち、都市立芸術大学美術学部油画専攻を卒業した進士三紗は画家とフリーランスフォトグラファーとの2つの顔を持ちながら数々の作品やコマーシャルワークを出しています。本展では、画家・進士三紗の表現を余すことなくご紹介する内容となっております。一貫した絵画創作テーマである「現代の消費社会からの原点回帰として、時間の永遠性と物質の循環」の表現として、「石」をモチーにし、自然界と自己の相互的な作用を絵画に落とし込む試みを続けています。
『立ち現れる輪郭』 進士三紗によるステートメント:
明日、どんな服を着よう。夜ご飯は何を食べよう。
このような些細な日常の選択も、私の意志で決定しているのではなく、気温や気候などの外部環境や
他者からの意見、憧れ、自分の立場によって、決定「させられている」と感じることがしばしばある。
個体としての私が持つ意志は、絶対的なものではなく、外部(環境や他者)の影響を受けながら曖昧に成り立っているのではないだろうか。同時に、外部は私の影響を受けていると言うことも可能だ。
私/外部の、押し合い、引き合いのなかで私の一部は外部へ放出され、また外部が私の一部となり
個体としての輪郭、境界は混ざり合う。
私と"外部"の境界は曖昧になり、しまいには大きな一つの存在として認識を拡張することができるのではないだろうか。
そして、他者と私を分けるものは境界線や自認ではなく、私と他者がそれぞれの意識(知覚世界)のなかで動き続けることによって引き起こされる摩擦に形作られる、不定形な輪郭だと言えるだろう。
自然界において、分厚い岩盤は外部の影響(雨風による風化)で崩れる。崩れた岩は外部の力(川の流れ)で下流へと流され削られる。川は雨量などの外部要因によって流れを激しくさせ、川は石を運びながら、また石に支えられながら成り立つ。一層外と内の区別は曖昧で、全体としての調和を保ちながら構成されている。
気候や地形のなかで姿形が決定させられている石たちを、不定形な輪郭を持つ私が描くことで絵もまた、外的作用によって形作られる独立したものになっていくのではないだろうか。
進士は、「私と外部の、押し合い、引き合いのなかで私の一部は外部へ放出され、また外部が私の一部となり、個体としての輪郭、境界は混ざり合う。それぞれの関係に張力のあるこの世界で絵を描くとき、絵もまた張力を持ち、独立した存在となっていく。」というメッセージを通して、石が水流によって削られ形作られるように、「個」としての人間も摩擦やノイズで形作られる、そのどれもが絶対的に永遠に存在するのではなく、外の影響を受けながら変化していく関係性のある張力を絵画で表現します。
今回は、支持体をキャンバスのみならず、「モノタイプ」という制作手法を用いて、影響をもたらすメタファーとしての周囲だけを描くことで「個」が立ち現れる様を表す作品群もご紹介します。
また、会場全体を包む音響空間もポイントです。さらに深く作品を体験できるように、サウンドクリエイター・松尾謙氏とコラボレートし、空間で、作品を「個」と捉えるが、その境目は目に見えずとも、互いに影響を与え合い響き渡るイメージの音響空間を創ります。
本展を一つの区切りとして今秋よりフランス・パリの芸術大学に留学する進士三紗が余すことなく表現する絵画の世界を是非ともご堪能ください。
進士三紗 Misa Shinshi
京都生まれ。京都市立芸術大学美術学部油画専攻 卒業
フリーランスフォトグラファーとしてエディトリアルなどで雑誌WIREDをはじめ数々のメディアクライアントワークを行う傍ら、油絵と写真の両方のジャンルで表現活動を行う。
現代の消費社会からの原点回帰として、時間の永遠性と物質の循環をテーマに作品制作を行う。石をモチーフにし、自然界と自己の相互的な作用を絵画に落とし込む試みを続けている。
Exhibitions
グループ展
2023 4月 「うつろう形」, まるとしかく(Shiga)
2022 6月 "metasequoia kyomachibori art fair2022" , chignitta space (Osaka)
10月 "層をなす/be in layers" , kumagusuku (Kyoto)
11月 "IN THE FLOW", 松栄堂 薫習館 (Kyoto)
2021 2月 京都市立芸大作品展 , 京都市京セラ美術館 (Kyoto)
6月 "the sight of the stars makes me dream", SCÈNE (Tokyo)
9月 "Where is love entrance", kumagusuku / Kyoto Makers Garage (Kyoto)
12月 "MINT" , KAGANHOTEL (Kyoto)
2020 2月 京都市立芸大作品展 , 京都市立芸術大学校内 (Kyoto)
9月 Group Exhibition 『Tourbillon 18』,Oギャラリーeyes (Osaka)
2019 2月 京都市立芸大作品展 , 京都市立芸術大学校内 (Kyoto)
10月 写真展「オクトーバー写真研究会 大展覧会」, C.A.P 4階ギャラリー (Kobe)
2018 2月 京都市立芸大作品展 , 京都市立芸術大学校内 (Kyoto)
2月 写真展「なんか一人となんか二人」, ANTIQUE belle GALLERY (Kyoto)
7月 油画専攻グループ展「17。」, 京都市立芸術大学校内 (Kyoto)
個展
2023 5月 "汽水域" , バイソンギャラリー(兵庫)
2022 5月 「Shape of time」, atelier ST,CAT (Tokyo)
2020 7月 「Flow」, KAGANHOTEL (Kyoto)
2019 9月 「ONE'S」, LINDA HOSTEL 106 (Osaka)
受賞歴 2022 6月 "metasequoia kyomachibori art fair 2022" 笹貫淳子賞
Misa Shinshi Solo Exhibition
進士三紗個展「立ち現れる輪郭」 概要
開催日時
2023年7月8日(土)〜17日(月)13:00 〜 19:00 会期中無休、入場無料・予約不要
※7月12日(水)のみイベントのため17:30にクローズします。
会場
チグニッタスペース(大阪市西区京町堀1-13-21 高木ビル1F 奥)
内容
進士三紗 油画作品の展示販売
オープニングギャラリートーク
初日の7月8日(土)午後3時より、進士三紗を囲んでお話を聞きます。
入場無料・予約不要 お集まりください!
企画:ジュンコササヌキクリエイション
音響デザイン:松尾謙 (SOUND-1)
協力:チグニッタスペース
文責:笹貫淳子
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