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澁⾕俊彦 Snow Pallet 13 -Snow on Anthropocene-



「Snow Pallet」とは、札幌在住の美術家、澁⾕俊彦が展開しているランドアート。屋外に配置されたオブジェの裏面に塗布された蛍光塗料が、光の反射によって雪面に鮮やかな色彩を表出させるというシンプルで美しいインスタレーションです。13回目となる今年は、札幌パークホテル中庭で初雪から雪解けまでの4ヶ月に渡り展開されました。過去最大となる高さや形状の異なるオブジェ70台が配置された中庭に雪が降り積もり、太陽光と雪の形状が、光や影の変化をもたらし、日々、あるいは一日のなかでも様々な風景を見せてくれます。雪が浅い日にはキタキツネが会場を通り小さな足跡を残すという、まさに自然と寄り添いながら共生する「Snow Pallet」。唯一人工的なアクセントを残す蛍光色が雪面にグラフィカルな美しさを引き出し、見る人に鮮やかな記憶を残してくれます。澁⾕さんの「Snow Pallet」は、年間降雪量が6mに達する札幌ならではの「冬の記憶」。それはまた、年々降雪量が減少する北海道から気候変動、地球温暖化に対する警鐘でもあります。今シーズンの終了にあたり、澁⾕俊彦さんからいただいたレポートとともにご覧ください。



 

Snow Pallet13 -アントロポセン(人新世)に積もる雪-


北国の地域特性を活かした新しいアートの在り方は、冬の大地との強い結びつきにあると考える。私のランドアートは環境と融合し、自然と相対するのではなく、寄り添うように共生することを目指している。


20.12.15.11:00 スノーパレット 初日がスタート。

冬のランドアート「Snow Pallet」は年間降雪量6mにも達する190万都市札幌を中心に、展開されている「冬の記憶」のためのサイトスペシフィックアートである。スノーパレットとは、オブジェ裏面に塗布された蛍光塗料が雪の反射によって雪面に鮮やかな色彩を表出させるインスタレーションである。



20.12.20 .12:00 昨晩からの降雪によって約18㎝の積雪となり、クリスマス前の第1段階の見頃を迎える。

高さの異なる幾つものオブジェによってその時々の太陽光と積雪量によって景色を変えていく。設置場所によって異なる降り積もる雪の形状、初雪から雪解けまでの約4か月の変化する景色、1日の時間軸で変化する表出する色彩、また天候によって変化する色彩(曇天、降雪時のほうが彩度の映える太陽光のスペクトルのマジック)。これは、タイムスケープランドアートでもある。



20.12.20 14:00 札幌パークホテル9階からの眺望。正面に藻岩山。コンサートホールキタラ。中島公園の菖蒲池。左上には恵庭岳。


2011年よりこのプロジェクトとはスタートしたが、年々降雪量は減っていく傾向がみられる。また数十年単位で記録された突発的な大雪、または少雪が短周期で頻繁に起きる。これらの現象は、地球温暖化、またそれに伴う気候変動、異常気象の影響であろうことと推測できる。人間の開発行為によって環境破壊が進む地球は、これからどんな方向に向かうのか。



20.12.21 15:00 放射状の木々の影とオブジェたちの影が雪面に織りなす美しいハーモニー。

これらの環境破壊は人類史上最大、かつ地球市民全ての人々に関わる大きな課題に対して、如何に環境保全、環境改善の道筋を示していけるのか。新型コロナウイルス感染症に収束の気配が未だ見えない中、急務に見直しが迫られているのが自然環境と人間の新しい関係の構築である。このプロジェクトは、気象データとスノーパレットの景色の記憶を残すことによって、気候変動への警鐘を鳴らすものでもある。


20.12.21 12:00 積雪の少ない今は強い日差しでオブジェの長い影が幾何学模様のように雪面に表出。「音符のようだ」と評する方も。

スノーパレットプロジェクトの変遷

Snow Pallet 1 / モエレ沼公園(2011年)

Snow Pallet 2 / 札幌芸術の森美術館 中庭インスタレーション(2011~2012)

Snow Pallet 3 / 関口雄揮記念美術館 前庭(2012~2013)

Snow Pallet 4 / ノース・スノーランド・イン千歳 (2013)

Snow Pallet 5 / 小樽運河プラザ、小樽貴賓館 (2013~2014)

Snow Pallet 6 / 防風林アートプロジェクト、帯広(2014)

Snow Pallet 7 / 札幌宮の森美術館 中庭テラス (2014~2015)

Snow Pallet 8 / 思考するアート展 コトバノカタチ、道立帯広美術館 (2015~2016)

Snow Pallet 9 / 六花亭札幌本店 南面前庭(2016~2017)

Snow Pallet 10 / ホテル札幌ガーデンパレス 4F中庭(2017~2018)

Snow Pallet 11 / 六花亭札幌本店 南面前庭(2018~2019)

Snow Pallet 12 / 札幌デザイナー学院 階段エントランス、ショコラティエ・マサール本店 中庭 (2019~2020)

Snow Pallet 13 / 札幌パークホテル 中庭 (2020~2021)



20.12.28 20:00 夜のスノーパレット。くっきりと浮かぶ足跡はキタキツネ夜のパトロール

Snow Pallet13


■会期:2020年12月1日~2021年3月4日

■会場:札幌パークホテル中庭


株式会社グランビスタ ホテル&リゾートが経営する、札幌パークホテルと、美術家・澁⾕俊彦は、2020 年12 ⽉1 ⽇から 2021 年3⽉4日の同中庭の雪解けまで、冬のランドアート「Snow Pallet 13」展を、札幌パークホテル中庭にて開催した。



21.1.3 13:00 曇天ではこのように反射光のみが表出されます。札幌中央区の深積雪25㎝ 昨年3㎝ 平年値38㎝ ※札幌管区気象台

札幌パークホテルには、中島公園の美しい⾵景を⽣かした約 1,700 平⽅メートルの庭園がある。北海道⼤学で花卉・造園学を担当し、ユリの研究で知られる農学博⼠ 明道博教授の設計である。藻岩⼭から中島公園への連なりを借景として巧みに取り⼊れた庭園は札幌市内の都市型ホテルの中では最⼤規模である。



21.1.8 11:00 ドーナツ型オブジェ上はユーモラスな雪のかたちを見せる

今回、1700平方メートルのこの中庭に過去最大個数となる70基のオブジェを設置。円板型、2層円板型、ドーナツ型、三角形、Z型などを混在させたレイアウトである。札幌のこの冬の特徴は降雪後、晴れの日が続くことである。(1月の快晴日は18日/31日と多く、そのため低い角度からの太陽光によってオブジェの影(幾何学図形)が雪面に表れ、さながら影絵のようである。



21.1.20 early morning 日差しの強い午前中「光と影の境界線」

朝日が東から差し込み、建物の影が中庭の約半分を被い、光と影の2つの世界を同時に見ることが出来る。時間と共に南へ移動した太陽光により、今度は公園の樹木の影が映りこむ。1日の時間軸だけで幾つもの景色に変化する。もちろん反射光の色の鮮やかさも変化に富み、曇天時、降雪時には全ての反射光が一斉に輝きを放つ。



21.1.20 14:40 木々の影とオブジェの反射光がほどよく調和している珍しい眺め。札幌市街地 積雪深50㎝ (昨年度16㎝ 平年値56cm)※札幌管区気象

12月から1月末までは、想定外の大雪に見舞われることなく、順調な積雪により徐々に変化するスノーパレットの景色をご覧頂くことが出来た。ここはホテルの中庭故、上層階から窓越しに見下ろすことが出来るため、普段では見ることのできない俯瞰の景色を眺めることが出来る。



21.1.20 15:00 同日、やや日差しが強くなってくると、雪面の景色は異なる表情を見せる。

気象の記録 12月 : 降雪量50㎝、昨年54㎝、平年値132㎝ 1月 : 降雪量137cm、昨年85㎝、平年値173㎝ 2月 : 降雪量 75cm、昨年195㎝、平年値147㎝ 3月 : 降雪量44㎝、昨年49㎝、平年値98㎝(※3月10日までの記録)


21.1.23 14:15 0度近い気温では反射熱効果により雪は溶けだし光の屈折により天板裏の蛍光色が写りこんで色付きつららが形成される。

しかし、一転して2月は例年最も寒い月のはずが、最高気温がプラスの日が18日と降雪の少なさ(例年の半分、昨年比38%)と相まって、中庭の地肌が露出する事態となった。


21.2.21 2月中旬、平均気温は+4℃ 札幌管区気象台の記録では過去に記録されたことがない。

このまま、2月末での終了を予感したが、2月27日~3月2日にかけてのこの冬初めてのまとまった降雪(一晩で約30㎝)があり、札幌市街地も大雪警報発令される中、スノーパレットの一部のオブジェたちはめでたく(?)全埋没した。



21.2.27 11:00 昨日夕方からの断続的な積雪によりスノーパレットは1週間ぶりに輝きを得る。

今シーズン最初で最後の大雪により、スノーパレット13はその本来の姿を鑑賞者の脳裏に焼き付け、その直後の暖気により瞬く間に消失した。



21.2.27 14:00 この冬を象徴するように短時間周期で降雪と晴れを繰り返す。

21.3.3 10:00 全埋没したオブジェの痕跡も。積もった雪の形状が尖っていたり、丸かったり、平らだったりと不思議な光景。

21.3.4 11:00 再びの気温上昇により、顔を出すオブジェたち。

21.3.4 11:00 天板上の雪もつららとなって溶けだす。最高気温+4度。明日は+10度。駆け足で春がやってくる。

2021年3月11日正午、全オブジェの撤去をもって冬の終わりを宣言しました。過去のシリーズを振り返っても、例のない最大個数のオブジェを配したランドアートとなりました。数十年ぶりというような想定外の大雪が降ることもなく過ぎたシーズンです。日々降雪と快晴が繰り返され、今までないオブジェの影と反射光のハーモニーを観ることが多くありました。設置したオブジェには幾つもの高さの異なるものが準備され、1メートルの降雪にも埋没することない大きさのものもあります。結果的に全埋没したオブジェたちは高さ30㎝程度のものに留まりました。札幌の気象データは年々少雪傾向をしめしておりますが、北海道内全域をみると局地的大雪も記録され、多くの被害も出ております。 地球温暖化、気候変動、異常気象 これは全てわれわれ人類の歴史です。人為的要因によるものが大と言えるでしょう。

スノーパレットプロジェクトは毎冬の降雪の記録をアートで記憶することですが、究極、雪不足でプロジェクトが成立しないシーズンが近い将来あるかもしれません。それも1つの冬の記録として残していければ良いと考えます。もちろんそれを願っているわけではありません。

毎冬の1つ1つの美しい記憶をこのプロジェクトで紡いでいけることを望みます。


スノーパレットプロジェクト/澁谷俊彦


■Toshihiko Shibuya website


■snow pallet project website


■インタビュー動画


■Snow Pallet 13


■Snow Pallet 13 Cloudy, fine later and snowy 


■Toshihiko Shibuya Youtube channel

 
澁⾕俊彦
1960 北海道(室蘭市生まれ) 1983.3 武蔵野美術短期大学  商業デザイン学科卒業(卒業制作:優秀賞) 1984.3 武蔵野美術短期大学専攻科修了 (修了制作:研究室賞) ■現在:スノーパレットプロジェクト主宰 イコロの森ミーツ・アート代表 北海道芸術学会副会長(2021年4月~)専門学校札幌デザイナー学院 学校長 北翔大学教育文化学部芸術学科 非常勤講師  ■AWARD 2017 「北海道文化奨励賞」 2014 「札幌文化奨励賞」 1998 第24回ドイツ・オランダ・ベルギー美術賞展 「優秀賞」 サッポロ・アート・アニュアル98 「グランプリ」 1994 国際美術大賞展 「91,スポンサー賞」 「92,特賞」「93,美術新聞社賞」「94,奨励賞」第4回94ARTBOX大賞展 「賞候補」 (麻布美術工芸館/六本木) 1993 コンテンポラリーアート協会東京展 「91,奨励賞」「92,金賞」「93,銀賞」 1992 第7回橋の美術展 「大賞」(坂出市民美術館/香川県) 1989 コンテンポラリーアート協会ニューヨーク展「最優秀賞」 1989 第15回i・m・a展 「IMA賞」(東京都美術館) ■PERMANENT COLLECTION ・坂出市民美術館 (香川県) ■展覧会歴 2020 GEUMGANG NATURE ART BIENNALE ‘Nature Art Video Exhibition’ 「金剛ネイチャーアートビエンナーレ」‘ネイチャーアートビデオ展 (ヨミサン自然芸術公園、韓国) 澁谷俊彦展 Generation 8 「起源・発生 / 共生・共存」(真鍋庭園/帯広) 2019 What’s winter art ? ─冬のアートを辿る─(札幌文化芸術交流センター SCARTS) Northern Art Collaboration 2019 in Tampere(ガレリアロンガ / フィンランド) イコロの森ミーツ・アート2019 (イコロの森/苫小牧市) これまでも、これからも/札幌グランドホテル開業85周年記念展 (グランビスタ) 2018 帯広コンテンポラリーアート2018「河口」展 / 新川河口周辺領域 2017  ポンペツ藝術要塞2017(鵡川穂別 道民の森) ホワイトジェネレーション/ 北の脈々2 North Line 2 (500m美術館 / 札幌) 2016 Candy Room / アイスヒルズホテルin 当別 (当別) 2014~ ヒト科ヒト属ヒト展/帯広コンテンポラリーアート2016(帯広の森) 2015 思考するアート展 コトバノカタチ / Snow pallet 8(北海道立帯広美術館) マイナスアート展 / 帯広コンテンポラリーアート2015(旧ホテルみのや/ 帯広) ハルカヤマ藝術要塞2015 (小樽春香山周辺) 2011~2015 2014 Sprouting Garden-「萌ゆる森」 (札幌芸術の森、野外美術館) Far East Contemporary Art 2014 (北見市留辺蘂、旧大和小学校周辺)ク リエイティブ北海道meets バンコク (タイ、バンコク) ART X-WINTER ART(クロスホテル札幌、エントランス) 2013 絵画の場合・最終章 (北翔大学北方圏学術情報センター/札幌) 三笠奔別炭鉱アートプロジェクト2013 (三笠奔別旧住友炭鉱 / 三笠) New City Art Fair in Taipei (松山文創園区、台北 / 台湾) 2012 クリエイティブ北海道meets 香港 (セントラルオアシスギャラリー / 香港) スノースケープモエレ7 (モエレ沼公園ガラスのピラミッド周辺) アルタイルの庭 /JRタワー・アートプラネッツ(プラニスホール、そらのガーデン) ART KYOTO 2012(ホテルモントレ京都) 2010 北海道立体表現展(北海道立近代美術館、札幌芸術の森美術館) PLUS1 This Place (本郷新記念札幌彫刻美術館) 2009 PLUS1 +柴橋供夫企画 空間の蝕知へ絵画の場合2009 (ギャラリーエッセ /札幌) 2008 アジア・プリント・アドベンチャー08 IN おといねっぷ 第29回国際「インパクト・アート・フェスティバル (京都市立美術館) 2007 絵画の場合 (ポルトギャラリー/札幌) 2005 札幌の美術「札幌を彩る作家たち展」~北の街 季節のなかで 絵画の場合 (ポルトギャラリー/札幌) 2004 絵画の場合-ナンデモアリノナカデ- (ポルトギャラリー/札幌) 2003 アジア・プリント・アドベンチャー03 (北海道立近代美術館) 国際アートフェア・リニアート (ベルギー、ゲント) 2002 インターナショナル グループ展 (セーラムギャラリー/ニューヨーク) 国際アートフェア・リニアート (ベルギー、ゲント) 2001 さっぽろ美術展 (札幌市民ギャラリー) 日本美の継承展 (在札幌米国総領事館/札幌アメリカンセンター) 第2回池田満寿夫記念芸術賞(東京国際フォーラム、大阪現代美術センター) 三浦美術館大賞展 (愛媛県ミウラートヴィレッジ) 2000 ドイツ美術賞展 (フランクフルト) 1998   第24回ドイツ・オランダ・ベルギー美術賞展 サッポロ・アート・アニュアル98アジア・プリント・アドベンチャー98 (北海道立近代美術館) 1997   第3回鹿沼市立川上澄生美術館木版画大賞 (鹿沼市民文化センター) さっぽろ美術展 (札幌市民ギャラリー) 1996 交差する座標軸(錦糸町西武ザ・プライム、スタジオ錦糸町) 1994 国際美術大賞展 第4回94ARTBOX大賞展 (麻布美術工芸館/六本木) 1993 コンテンポラリーアート協会東京展 第7回橋の美術展(坂出市民美術館/香川県) 1990 コンテンポラリーアートエキスポ東京  コンテンポラリーアート協会ニューヨーク展 北海道・今日の美術 「軽やかさとの対話」 (北海道立近代美術館、道立旭川美術館、道立函館美術館) 1989 第15回i・m・a展 [IMA賞] (東京都美術館) ETDA展 「表現の現在」日本文化デザイン会議 (幕張メッセ/千葉) 1988 国際インパクト・アート・フェスティバル (京都市美術館) 1986 第12回、第13回 日仏現代美術展 (グランパレ/パリ、東京都) 第5回上野の森美術館絵画大賞展 (上野の森美術館) JAPANインパクト・アート・ナウ 87 (韓国美術館/ソウル) 1987 現代日本絵画代表作家展 (旧西ドイツ、ベルギー) WORKS ON PAPER`87`89 (大阪府立現代美術センター) 1985 85現代美術の祭典 (埼玉県立近代美術館)

 





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